『若者を見殺しにする国』を大変興味深く拝読させていただきました。
色々とご批判もおありかと思いますが、赤木さんの当初の目論見であろう、現代の若年貧困層に注目を向けさせるという目的においては、「希望は戦争」というセンセーショナルな結論を明記し、それを決して曲げないという姿勢は、戦略的には大正解だろうと思います。
意識的にアジテーターであろうとする赤木さんのダダっこのような理屈に対し、数多くの文化人の皆さんが「道徳的」な観点から批判を加えようとするのは、なんだか見ていて滑稽ですね。そういう批判がかなり横滑りしているように思えるのは、赤木さんの書いている内容(特に若年層が貧困にあえいでいるという紛れもない事実)に、特に有効な手立てが見出せていない大人たちの現状があるからなのでしょう。
ただ、「希望は戦争」という結論を堅持している割には、どのような手段で戦争によって若者達を救おうとしているのか、理論的にあやふやですね。
赤木さんの希望は、
1.若年貧困層の雇用の安定化、ならびに収入の増大
2.貧困層と富裕層の階層関係の流動化、もしくは逆転
この二つの願望を戦争によって実現しようというものですよね。
では、どこの国と戦争をおっぱじめれば、この二つの願望が都合よく実現するというのでしょう? なかなか難問です。
戦争をするとなると、莫大な軍事費がかかり、もちろんそれはかなり「公平」に全国民に負担としてのしかかるものですから、相手国からなんらかの手段で富を強奪しないかぎり、若年層の生活はますます厳しいものになるに違いありません。もちろん負けてしまっては、若年層どころか全国民が貧困層に突入するおそれがありますから、絶対に勝てる相手を選ばなければなりません。
アメリカ、中国、ロシアなどは、核武装国ですから絶対に勝てません。逆に日本の富を根こそぎ収奪されるはずです。なにせ、こんなチャンスは二度とないでしょうから。
韓国あたりは弱そうに思えますが、実は日本の自衛隊と戦力的に大差ありません。空軍力、海軍力の比較では、かなり拮抗しています。おまけに揚陸作戦は非常に難しいので、防衛するほうが簡単です。つまり韓国を相手に戦争を仕掛ければ、逆に返り討ちに遭う可能性が高いということです。
となると、北朝鮮あたり……? となるかと思いますが、北朝鮮の場合、たとえ勝ったとしても、奪うべき財産が何もありません。ただでさえ貧困にあえいでいる北朝鮮国民を、逆に養ってあげなくてはなりません。そもそも若年層の救済のために仕掛ける戦争なのに、これでは本末転倒です。
ということは、「弱そう」で、なおかつ「お金持ち」の国をターゲットにしなければならないのですから……ブルネイ王国あたりでしょうか? なにせ石油がたくさん出ますから。
ブルネイの人々には何の恨みもないのですが、日本の貧乏な若者を救うためには犠牲になってもらうことにしましょう。たまたまお金持ちだったあんたらが悪いのだ、ということで。
赤木さんの理屈を広げていくと、以上のような「国家的押し込み強盗」のような感じになると思いますが、著者的にはこの結論でOKでしょうか? ご意見をお聞かせください。(意地悪な質問でごめんなさいねw)